日本では、ほとんどの人が１日に 2 回以上歯磨きをしています。私も子供の頃には母親から、結婚してからは家内から「歯磨きを毎日きちんとしないと、歯医者さんで怖くて痛い治療をされるわよ」と説教をされ続けたせいか、今では 1 日 3 度の歯磨きが習慣になっています。成人した子供たちも私たち両親から教育されたせいで歯磨きが習慣づけられています。
しかし、私の家族には歯磨きをしない唯一の例外がいました。犬好きの私の顔を大きな舌で舐めることを生きがい (？) にしている雌犬です。「君はね 42 本も歯があるんだから、毎日、歯磨きをしないと、唾液や食べ物の残りが歯に蓄積して、歯周病になりやすいんだよ。歯周病は侮れない怖い病気だから、さあ歯磨きしよう！」と言っても、彼女は頑として歯ブラシを受け付けず、嬉々として私の顔を舐め続け、まさしく私は愛犬に舐められています。
この状況を打開すべく、10 年来の研究仲間である大阪大学歯学部教授の仲野和彦先生にご相談し、犬にとってより効果の高い歯ブラシを開発すべく共同研究を行いました。(株) 夢職人のご協力を得て、この度、ついに犬用歯ブラシが完成しました。生まれてから一度も歯磨きをされたことのない大学の実験犬に試作品を使ってみたところ、効果的で使いやすいことがわかりました。 思いもかけず早く天国に行ってしまった家の愛犬も、きっとこの歯ブラシを喜んで受け入れ、奇麗になった口でご褒美として私の顔を丁寧に舐めてくれたことでしょう。

今から約 10 年前に、麻布大学獣医学部の浅井史敏教授とともに「人間と動物の口に存在する細菌を研究するスタディグループ」を立ち上げました。大学レベルでの獣医師と歯科医師のコラボレーションはありませんでしたので、画期的なことでした。そして、この研究会では、イヌやネコの口の中に存在する細菌と歯周病や心臓の病気に関する研究を進め、次々に重要な知見を明らかにしてきました。
最近になって、イヌやネコの口の中を効率的に清掃するための器具の必要性を痛感し、私の研究室での人間の歯に対する研究によって「プラーク沈着抑制効果」が認められたミネラルコーティング技術を開発された MISOKA 歯ブラシを生産する (株) 夢職人の辻社長に効果的な清掃器具の作成を提案しました。その後、従来の歯ブラシ型の器具では困難である点を洗い出し、斬新なアプローチで設計するための議論を重ねました。
今回発売の清掃器具はその様な背景で作成され、私たち自身で科学的な効果を検証したものです。敢えて「歯ブラシ型」ではない構造になっています。
「口の細菌の伝播」ということを聞かれたことはありますか？口の細菌は身近で接する人の唾液を介して伝播していきます。そして、口の中の環境が悪化している場合には、容易に細菌が定着します。身近な動物の口の中をきれいにすることは、自分の口の中をきれいにすることにもつながるのです。
この機会に、自分と身近な動物の両方の口の中をきれいに保つことの重要性を見つめ直してください！